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■ セーラーのための体力つくり
(玉木伸和(横浜市立大学大学院総合理学研究科・日本セーリング連盟医・科学スタッフ))

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4. トレーニングの年間計画

 年間を準備期,試合期そして移行期に分類し,1年間を期分けする。

1)準備期
 準備期として,一般的には5〜6カ月間を当てる。この時期の前半は,基礎体力の増強が主目的となる。そして,試合期が近づくにつれ,実際の動きに必要な体力,すなわち専門的体力の向上が大きな目的となってくる。

A 筋系体力トレーニング
a 筋肥大期:約2カ月間
 用いる重量は,個人によって異なる。一般には,10〜12回しか持ち上げることができない重量を用いてトレーニングする。1日のトレーニングでは,10〜12回を1セットとし,最低3セット実施する。トレーニング頻度は,週2回以上で効果がみられ,頻度を多くすれば効果も大きくなるといわれている。しかし,頻度が多くなると,疲労を回復させることができなくなり,逆効果となる。週3回の頻度が,安全で効果的なものである。重量を挙上するとき(筋は短縮性収縮をする)には,反動をつけないですばやく行う。そして,筋に意識を集中しながら3〜4秒間かけて下ろす。トレーニングを継続していくと,1セットで挙上できる回数が増加してくる。その際には,新たに重量を漸増しなければならない。

b 筋力向上期:約2カ月間
 筋力を増強する場合,4〜6回しか持ち上げることができない重量を用いる。セット数は1日に3セットとし,これを週3回実施する。筋肥大期と同様に,反動は使わないようにし,できるだけ素早く挙げる。トレーニングで用いる重量はかなり重たいので,傷害の予防のためにも2秒程度かけ,重量物をコントロールしながら下ろす。トレーニング効果が見られたら,重量を漸増することは筋肥大期と同様である。

c パワー向上期:1〜2カ月間
 30秒間で15回しか持ち上げられない重量を用いる。ひとつの種目を30秒間最大速度で実施したら30秒間休み,次の種目へ移る。1日に3セットとし,週3回実施する。このトレーニング方法を,スーパーサーキット法と呼ぶ。
 筋系トレーニングの効果を最大限に上げるには,夕食に良質の蛋白質を十分量食べる必要がある。朝・昼に摂取してもあまり効果ない。また,トレーニング時間も夕方から夜の方がよい。

B エネルギー系体力トレーニング
15分間および30分間のランニング,そしてインターバル走によって実施する。運動の強度,すなわち走る速さは脈拍数によって調節する。15分間用の脈拍数は,疲労物質である乳酸が血液中に急激に出現するであろう強度にほぼ相当する。したがって,強風下の最後の頑張りに必要な無酸素的な能力を向上させることが主な目的である。同時に,一般的なスタミナも改善することができる。30分間用の脈拍数に相当する運動強度では,血液中に乳酸が出現しないので,理論的には無制限に運動できる強度に相当する。そのため,軽風から中風に必要なスタミナの向上が主目的となる。体脂肪の多めの選手に対しては,30分間用のランニングは身体組成の改善策としても有効である。インターバル走は有酸素的持久力と無酸素的持久力の両方を向上させる。

 運動中の脈拍数を測定するには計器(例としてキャノン・トレーディングが扱うPOLAR心拍計を示す)が必要なため,一般的にはランニング開始5〜10分後に立ち止まり,15秒間脈を測定する。その値を4倍して10をたすと,運動中の脈拍数にほぼ一致する。15分間用と30分間用の脈拍数の求め方は,以下のようにする。

   15分用:((220−安静時脈拍数)×0.7)+安静時脈拍数
   30分用:((220−安静時脈拍数)×0.5)+安静時脈拍数

a 導入期:約1カ月
 15分間走を週1回,30分間走を週2回実施し,有酸素的体力の基礎つくりを行う。

b 有酸素的体力向上期:約2カ月
 インターバル走A(30秒間全力の8〜9割くらいの速度で走り,90秒間ジョギング。これを10回繰り返す)を週1回,15分間走を週1回,30分間走を週1回実施する。

c 無酸素的体力向上期:2カ月
 インターバル走Aを週1回,インターバル走B(15秒間全力ダッシュの後,45秒間ジョギング。これを20〜30回繰り返す)を週1回,15分間走を週1回実施する。

2)試合期
 レースで最高の競技成績をあげるためには,コンディショニングが最も重要なことである。しかし,レースを経験するたびに,今まで蓄積してきた体力が消耗され,良好なコンディションでレースに望むことができなくなることもある。したがって,試合期でのトレーニングは,体力の低下を最小限に押さえることが大きな目的となる。長いシーズンの間には,目的とするレースがいくつか存在するだろう。疲労を蓄積しないよう,また体力の低下を極力防ぐため,その1つ1つのレースに対して,短期の準備期,試合期そして移行期を設定するとよいだろう。

A 筋系のトレーニング
a 準備期
 種目数を減らし,週1回筋力向上期の重量で2セットトレーニングを実施する。そして,試合の1週間前に最大重量付近を1回,1セット行い筋の活動水準を高めておく。

b 試合期
 1週間前から調整期とし,特別のトレーニングは実施しない。

c 移行期
 試合後の1週間とし,休養をとる。

B エネルギー系のトレーニング
a 準備期
 試合2週間前まで,30分用あるいは15分用のランニングを週2回実施する。

b 試合期
 2週間前から調整期とし,試合5日前までは各自の調整方法によって,散歩あるいは軽いジョギングを10〜15分間程度,毎日実施してもよい。4日前から試合終了までは,筋に貯蔵したグリコーゲンを消耗させないよう,散歩程度とする。

c 移行期
 試合後の1週間とし,散歩程度とする。

3)移行期:約1カ月間
 試合期が終わってからの2週間は完全休養とし,特別の身体活動(海上練習も陸上トレーニング)は実施しない。この時期に試合期で蓄積した疲労を回復させる。その後の2週間は積極的な休養期間とし,リクリェーション的運動(球技など)を主に実施する。筋系のトレーニングを実施する場合には,軽めの重量を用いて身体慣らし程度とする。


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